今日の日記

2001年12月11日
続き

M8:10頃
状況はさして変わっているとは言えない。手に持っている携帯をじっと見つめながら、どこに電話するべきか考えた。まず頭に浮かんだのが、いつも世話になっている修理工場だった。いままでにも車が壊れたことは何度もあった。しかしそれはいつもごく小さなトラブルで、とりあえず自走で工場に持ち込むことに成功していた。道路上でまったく動かなくなってしまうというのは初めてのことだった。果たして来てくれるだろうか? そんなことを考えながら番号をかけようとする・・・・・自分の携帯なら番号が登録してあるがこれは他人のだった。俺は番号はもう忘れている。車内に番号をメモしたものがないか探す。あった。車を買ったときに店のパンフをもらった。それに修理工場の地図と電話番号も書いてある。番号を押して発信。出ない。当たり前だ。こんな早い時間から出勤しているわけがない。俺にしたって現に通勤途中だったのだ。いまはまだ始業時間ですらない。どうするか? パンフにはそれ以上の情報は書いてない。小さなところだから運営は結構いい加減かもしれない。想像以上に開業時間は遅いかもしれない。今日は休みという可能性だってある。電話がつながるまでここでこのまま待つか? バカバカしい。第一の望みは絶たれた。世の中すべて自分の思い通りにことが運んだら世話はない。俺は引き続き考える。さて。
AM8:20頃
一般にドライバが車が壊れたときにどうするか、どこに頼るか。それはドライバでなくても知っている、JAFの出張サービスに依頼することだ。問題がある、と思った。俺はJAF会員ではない。会員でなくてもその場で入会すれば対処してくれることは知っている。入会するにもとにかく金がいる。この際それは横に追いやっておくべきだ。現在の状況をなんとかするのを優先させなければ。JAFに決定だ。しかしJAFの電話番号がわからない。車内にJAFに関する情報が皆無なのはわかりきっている。ここでも頼みの綱はこの携帯だけだ。104に電話した。携帯から104にかけたらいくらかかるんだろう、とふと思った。携帯を貸してくれた彼の顔が脳裏を過る。いつもニコニコと笑っている人のいい人物だ。通りがかったのが彼だったことも幸運のうちの一つだったのだろう。JAFの番号はわかった。しばらく待って気持ちを落ち着ける。初めてのところに電話をかけるのは俺でなくたって緊張するものじゃないか? 大体が俺は普段は電話は滅多に使わない。最初は女性の声が出た。何度か保留待ちされる。最後につながった相手に自分の場所を説明する。地図を見ながら相手に伝える。電話はやっぱり苦手だ。どうも気持ちがうわっついてしょうがない。冷静に話すってのはまったく難しいものだ。見も知らぬ相手なら尚更だろう。到着には40分かかるという。わかりました、と俺は言って電話を切った。深呼吸する。ひとまずの仕事は終わった。40分。最低で40分だ。その間俺はなすすべもなくここでじっと待っていなくてはならない。開き直ってしまえ。
AM8:40頃
気持ちは逸る。が、どうすることもできない。俺は無力で無能だ。何もせずにじっと車の中に身を潜めている。こんなことをしている場合なのか、こんなことをしていていいのか、ほかになにかやるべきことがあるのではないか。様々な思いが交錯する。カラダが弾け飛んでしまいそうな瞬間がある。何度もある。そのたびに自分を抑えるのに苦労する。知らず奥歯を強くかみ締めていた。ずっとだ。道理であごが疲れるわけだ。俺は1時間ほど前に「仕事に行く時間だ」と言った。あいつに言った言葉は嘘になってしまった。俺は仕事なんかしちゃいない。もうとっくに始業時間は過ぎている。今日はサボったのと同じことだ。俺は嘘吐きだ。随分と偉そうなことを言ったものだ。あのまま自宅でPCの前にずっと座っていたって構いはしなかった。仕事よりそのほうが楽しいんだからな。どっちにしたって今日の分の給料は引かれる。皆勤も飛んだ。それ以上に車の修理代だ。ああ・・・・・・・
AM9:30頃
来た。担当者は一人。五十がらみの気さくな感じの男性。毎日が初めて会う人と大勢接するという仕事ならそういう性格のほうがいいのだろう。こちらとしてもありがたいことだ。会員でないことを最初に説明する。別にあとでもよかったろうが早く厄介ごとは済ませたいという貧乏根性がはたらいたのかもしれない。こういうやりとりは詳しく書いてもいいものだろうか。とりあえず手続きを終えて作業に入ってもらう。単純なトラブルなら作業員一人でも解決できるだろうがエンジンまわりの故障とあっては修理ドックに持ち込む必要があるのでレッカー移動するとのこと。行き先を決めなくてはならない。JAFの修理工場はあまり考えたくなかった。単なる印象に過ぎないが余計な金がかかりそうな気がしたからだ。レッカー移動だけでも金を取られるというのに。次は俺のかかりつけの修理工場だが連絡のとれないまま持って行くわけにもいかない。距離も遠いしな。会社に出勤しなければという考えが湧く。会社に持って行ってもらうか? ここからならそれほど遠くもない。だがそのあとはどうする。会社まで修理の人に来てもらうのか。同僚やらその他知らぬ人々の衆人環視のもと修理してもらうのか。大体今日一日で直るという保障もない。結局自宅まで引き返すことにした。方針さえ決まれば行動は速い。さすがに手馴れた様子でスムーズに大胆に進めて行く。プロだな、と思う。大きなパイロンがドカドカと置かれ殆ど一車線が塞がれる格好になった。こういうことが認められるのもJAFの権威あってこそのものだろうか。作業車の助手席に乗るように言われ、道案内を頼まれる。視界が高い。普通のトラックと乗り心地は変わらない。道中懇々と入会していなかったことについて諭された。ほかに話題がなかったせいでもあるが。初めての人との会話では話すことなど少ない。道はもう混んではいなかったので割合早く到着した。車を動かせないので俺が乗って後ろを押してもらう。駐車場に入れた。出勤する前と同じ光景になったが、いまここにあるのはただの鉄の塊だ。なんとか早急に状況を復旧させなくては。JAFの仕事はここまで。作業車は立ち去った。あとは自分でなんとかしなくてはならない。
(切り)

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